サ     ビ     シ     イ     夜     は     






こんなに幸せなクリスマスは
もうないかもしれない。





夜の海にも映える眩いばかりの大きなクリスマスツリー。
綺麗なクリスマスツリーを私に見せた後で


『お前がいてくれてよかった・・』


葉月は奇跡のように笑うのだった。


そんな風に笑う葉月を見たのは初めてで、
ツリーよりも綺麗だと思わず見惚れてしまった。


なによりのクリスマスプレゼント。








今日見たツリーは実は去年から用意されていたものだったらしい。
おかしいよね、少し先を歩く葉月の背中をじっとにらむ。
一年も黙ってないで、どうせなら見つけたその時に教えてくれればよかったのに。
一人、海に来て、街の灯りとツリーを見て、それで私のことを考えるくらいなら。


「・・・どうした?さっきから黙って。なに考えてんだ
「・・うん、べつに・・さっきはいいもの見させてもらったなぁって・・」
はじめてみたよ、葉月の心からの笑顔。
いつもどこか瞳の奥は寂しい色してたから。
「お礼に葉月の頭なでてあげたい」
もう寂しくないように
お母さんが小さい子にしてあげるみたいに
「・・・遠慮しとく」
「やっぱり?」
苦笑い。
そんなにイヤそうな顔しなくたって。





ふいに手をつかまれる。
「お前、俺の頭なでようとするだろ。・・ぐしゃぐしゃにされるのいやだからな」
葉月の言い分に思わず笑ってしまった。


手をつなぐにも理由がいる関係。
だからよけいに指先に想いをこめて、ぎゅっとにぎりしめてしまう。


いつも今日みたく笑っていてほしい、
時折見せる寂しい横顔は、瞼のうらから離れないでいつまでも私の心の中に波紋を投げかけてくるから。


切ないってこういうこと、これが恋なのだと


「また・・見に来ようね」
この次のクリスマスもその次のクリスマスも、ずっとずっと一緒にいられたら
「ああ」














さびしい夜には呼んでください。
いつだってそばにいたいと願っているから。


















超短編。クリスマスイベントの帰り道です。
もっとせつないヒロインちゃんサイドの心情を書きたかったのですが、ボキャ不足で撃沈。
このクリスマスイベントはほんと「切ない・・」の一言に尽きますよね・・ホント涙出ましたよわたくし。
王子にはもっと明るくなってもらわねば!(違う)02.8.30