願い






「うわーーーさっぶーー」


耳がキーンと冷える。
すっかり暗くなった空に向かって息を吐き出すと、真っ白になって浮かび上がってくる様で。


「もう冬だな。お、星がよく見えるなー」
今日は鈴鹿と一緒に帰る日。
受験真っ只中の三年生の私たち。
予備校が無い日は鈴鹿の部活が終わるまで図書館で勉強して一緒に帰るようにしている。


「ねえねえ、流れ星見たことある?」


ホント星がキレイ。一つくらい流れないかな。


「あるぜ。この辺は昔そんな開発されてなかったからよ。星が今よりもっと見えたんだ。最近じゃ見れねぇケド。あ、そういや合宿行った時も見たな。」
「ふーん、スズカーはたくさんあるんだね。いいなぁ、私まだ一度も見たこと無いよ。あ、ねぇ、なんかお願い事とかした?」
「ん?いや、別に」
「えー!?なんで?アメリカとかさー」
「なんでって、願うひまもなかったし。自分で叶えるんだから星頼みなんて必要ないだろ」
「だからー自分の力じゃ叶えられそうにないお願い事するんだよ。そういう時は」
「たとえば?」
「んー・・背が伸びますように!とかさ。うわっゴメンナサイぶたないで!」
「おまえー、俺は毎日欠かさず牛乳飲んでんだからな!今にみてろよ!」


自分の夢に一直線な鈴鹿。進学校のうちの学園はほとんどが大学へ行くが鈴鹿は違う。
すごいね、アメリカ行きはもう目の前、もうすぐ叶うね。
その為に今すごく頑張ってるんだもんね。


「アメリカかぁ・・」
遠いな、すごく。
行ったことないし、そもそも日本から出たコト無いわ私。
「なんかアメリカ名物とか送ってちょーだいネv」
「なんだよアメリカ名物って・・」


ゆっくりゆっくり歩きながら、二人で空を見上げながら帰る。
こうやって一緒に帰れるのもあとわずかか・・。
「あ。」


流れ星!


真っ黒い空に突然走るひとすじの白い光。


お願いします、どうか、ずっと・・


ほんの一瞬の奇跡。


「お!今の見たか、!?やったな見れたじゃん流れ星!・・・おい、どうした?
とっさに願ってしまった自分の想い。
私は思わずうつむいてしまった。
ヤダ、私、今何願った?
今さら自分の気持ちに気付いてしまった。
遅いよホント、鈴鹿の顔見れない・・。


「スズカ―・・。バスケ頑張ってね。アメリカ行っても頑張ってね」
「ああ、言われなくても俺はやるぜ!何だよ突然ヘンなやつだな」
「なによぉ、今流れ星にスズカーがアメリカで成功しますようにってお願いしてあげたんだからね!」
鈴鹿が顔を赤くして嬉しそうに笑う。
「ホントかよー。アリガトなー」
がしがしと頭を撫でられる。


ゴメンね、鈴鹿。
ほんとはずっと鈴鹿と一緒にいたいってお願いしちゃったの。
でも撤回するから。
鈴鹿はアメリカで頑張れ。
私はここでずっと応援してるんだから。
大学生になったら、たくさんバイトしてお金貯めて会いに行くからね。




この大きな手が大好きです。











「スズカー!コラ寝ないの!」
「ムリだ!もう勘弁してくれ。俺は数学の次に英語が嫌いなんだよー!」
ただ今鈴鹿の部屋で英語の猛特訓中。
「誰のためにやってるの、もう〜。スズカーそんなんじゃチームの人とかと仲良くなれないよ?」
このセリフ本日3度目です。
「じゃぁさお前俺とずっと一緒にいろよ。で、通訳してくれ!」
鈴鹿、そんなんでやってけると思ってるの?世の中そんなに甘くないわよ。
「・・・私向こうの大学入るんだからね。四六時中一緒にいられないよ。」
「だよなー・・。そうなんだよなぁ、あんま一緒にいられねぇんだよな」
しょぼんとしてしまう鈴鹿。
「サビシー?」
「バカっ!俺は別に・・・・・・・・・・・・・・あー、まぁそりゃ・・ちっとはな・・」
しどろもどろになりながら、最後には本音をもらすんだよね、鈴鹿は。
真っ赤になっちゃって。ホントかわいいんだから。
「カ・ズ・マさん」
鈴鹿の手をぎゅっとにぎりしめ私は言う。
「大学以外の時間ならずっとそばにいるから。だから英語くらい覚えてv」


離れないから。








自分の力じゃ叶えられそうになかった流れ星へのお願い事は
鈴鹿があっさり叶えてくれました。





私にしてはめずらしくラブラブ設定な二人。
ワタクシ、スズカー落としてる時彼の進路聞いた時ビックリしちゃって。
「え!?お前アメリカ行っちゃうの!?」ガビーン・・(笑)
落としたところで遠恋かしら?とか思ってたんで、告白聞いてビックリ「俺もアメリカ行くのかーー!!(笑)」
でも途中までセツないですよねー・・卒業したら離れ離れとか思ってるんですよヒロインは!(泣)
ま、サイゴハッピーエンドでよかったですが。02.7.17