うっそ、マジで。
信じられない・・・・。


今日は楽しいデートのはず。
遊園地で遊びたおそうと、前日はウキウキ気分で雑誌でアトラクションのチェック。
ここも行こう、あそこも行こう、ご飯はここで食べようとか、いろいろ考えてたのに・・。


しょっぱなからお化け屋敷に入ろうと言った自分がそんなに悪いのか。


なにが、レディーファーストだ・・。
「やってくれたわね!スズカー!!」
握りこぶしを固め猛ダッシュでは鈴鹿の後を追いかけたのだった。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


限界。






と思ったときにはもう足が駆け出していた。
ダメだダメだ俺には耐えらんねぇ!
足元おぼつかない真っ黒い不気味な空間も、いつ飛び出してくるのかも予測つかない得体の知れないものも、昔から自分の苦手なモノだった。
情けなかろうがなんだろうが、とにかく今は早く外に出たい。


ただこの右手につかんでいる手だけは絶対に離さない。


ぎゅっと右手に力を込め鈴鹿は出口へ走った。







「ゼーハー、ゼーハー・・」
長かったような短かったような。
ようやくお化け屋敷から抜け出すことができた。全速力で走った為息も切れ切れだ。
「ハー、、わ、悪かったな・・急に走ったりして・・・」
右手はまだつないだまま。
鈴鹿は振り返った。


しかしそこにいたのは
真っ白い着物を着た髪の長い・・


「う、うわあーーー!」


鈴鹿の悲鳴が響き渡った。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


アマイバツ



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

鈴鹿の声がしてはびくっと足を止めた。
アイツ多分もう外に出たわね。私を置いて。
鈴鹿がこの手のホラー系が苦手なことは何となく知っていた(本人必死にかくしていたケド)
しかしまさか。
普通だったら女の子の方が「キャーv」とか言って彼氏にしがみついちゃったりするようなこのお化け屋敷で、自分の方が置いていかれるとは。
笑い話にもならないわ。
奈津美あたりに話そうもんなら爆笑された挙句さんざんバカにされことだろう。置いていかれた怒りもそのままもようやく出口に辿りついた。
出たところで地べたに座り込んでいる鈴鹿発見。
「鈴鹿!アンタって人は・・!!」
は思い切り文句を言おうとして、はたっと立ち止まった。
鈴鹿の前に白い着物に長い髪、特殊メイクを施した怖い顔した幽霊がたたずんでいる。
暗いところで見るのも怖いがこんな明るい場所ではっきり見えるのも非常に怖い。異様な光景だ。
お化け屋敷の幽霊役の人だよね・・?なんで、幽霊さんがここにいるの。
「なにしてんの?」
二人を交互に見比べては唖然としてたずねた。
の疑問に鈴鹿は顔を赤くして下を向いてしまい、代わりに幽霊が事情を説明した。
「あの・・お客様が急に私の手をつかんで走り出したもので・・すごい勢いでしたから声をかけることもできなくて」
スミマセンと困惑顔で幽霊が謝った。
「い、いや、俺の方こそ連れと間違えちまって、すいませんでした」
あわてて鈴鹿も立ち上がって謝る。
連れと間違えた・・?
二人のやり取りを見ては事情が飲み込めてきた。どうやら鈴鹿、自分ひとりで逃げたわけではないらしい。ちゃんとのことも一緒に連れて逃げたのだ、彼の中では。
一通り謝った後それでは仕事がありますのでと幽霊は持ち場に戻っていった。
残された二人。
はそっぽを向いてこちらを見ようとしない鈴鹿をちらりと見やった。
てっきり置いていかれたと思っていたのにまさか幽霊と自分を間違えていたとは。さっきの鈴鹿の悲鳴、一緒に逃げていたのがではなく幽霊だったことに気付いてさぞかし驚いたのだろう。
腰抜かしてたな。
事のいきさつが分かった時点で鈴鹿への怒りはとっくに失せたが、同時にこらえきれない笑いが込み上げてきた。
「スズカー・・笑って、もいい」
すでに声が震えている。
「・・・我慢はカラダによくねぇぞ」
鈴鹿は投げやりに言ってやった。
「あっはは!あはははははは〜〜〜!!」
は腹をかかえ思いきりしゃがみこんだ。地面をバンバンたたき笑い転げ、正に大爆笑。
そんなを見てハァー・・と鈴鹿はがっくりうなだれた。
こんな一番みっともないところをよりによってに見られてしまった。今まで16年生きてきた中で人生最大の失態。かなりのショックだ。


しばらく笑い続けていただったが、いきなりすくっと立ち上がり鈴鹿に詰めよった。
「でもねスズカー、私置いてったことに変わりないんだからね。私すっごく怖かったんだよ!」
さんざん笑っておいて自分のことを責めだすに鈴鹿は動揺する。
「なんだよ、スゲー笑ってたくせに。・・・まぁ悪かった・・な」
情けなさからか最後の方鈴鹿は小さく謝る。を置いていったつもりはなかったのだがとんだ大失態をおかした。明らかに自分のほうが分が悪い。
「それだけ?」
は口をとがらせわざと怒った顔を作りいじけ始めた。
「あー・・もうホント怖かったなぁ・・あんなトコにひとっりきり、頼りにしてたスズカーは逃げちゃうし・・なんか涙出てきた・・」
「だぁーもう、俺が悪かった!何でもするから許せ」
「ホント?」
表情を一変させてはうわーいとバンザイした。まさにその言葉を待っていたのだ。
「んー、なにおごってもらおっかなー」
「げ、おいお前あんま高いのは・・」
ひっかけられたか、と思うが後の祭り。
「なんてネ」
はいっとは鈴鹿の目の前に手のひらをさし出した。
「金?」
「ちっがう。手」
「は?」
「今日一日手つなご。それで許してあげる」
「バカ!お、お前、なに言って」
思ってもない申し出に鈴鹿はさらに動揺。顔が赤くなる。
「さっきみたいにはぐれちゃうかもしんないでしょー、今日人多いし」
「さっきみたいに」のところをあえて強調して言ってやり、ほら、とは手をふる。
「わかったよ!」
覚悟を決めたようで鈴鹿はの手を乱暴にとってズンズン歩き出した。


耳の後ろまで真っ赤。広い背中が照れてる。
は「やったぁ」と小さくガッツポーズした。
、今から絶叫マシーン巡りだからな!いいな」
「了解v」


やっぱり今日は楽しいデートの日。
つないだ手はあたたかくて
もう間違わないでね鈴鹿
は心の中でつぶやいた。





ネタにせずにはいられないスズカーのお化け屋敷。
もう、ほんっとカワイーですよね、スズカーは。
スズカーはかっこよくもあるのでそんな男気あふれるドリームも書いてみたいのですが、
どうも彼の場合こういいカンジに主人公ちゃんに振り回されてくれるようなネタしか思いつきません。
根が単純おバカさんいい人系だからでしょうか。でもいつかかっこいいスズカーの話を・・(野望)02.8.5